片翼の天使(短)

学校…初めて抜け出した。でも、全然気にならない。キラと一緒にいるっていうだけで、他のことが、どうでもよくなっちゃった。

『家まで送るね。』

陽が沈みキラが言った。
帰りたくないな…。このまま2人でどこまでも飛んで行けたらいいのに。

『キラ、ユリアは幸せだったんだよ。一緒にいるだけでよかったんだと思う。それでね、キラを心から想ってたんだと思う。』

自分でもよく分からないけど、ユリアの想いをキラに伝えてあげたい…そう思った。キラの幸せのために。

『急に、どうしたの?』

そう言って、私を見るキラの目は、明らかにユリアを見る目とは違うことが辛い。

『たぶんユリアは、キラと離れて生きて、死んだ後にキラを忘れて生まれ変わって、違う人を愛することがイヤだったんだよ。ユリアがユリアのままで、そして、キラも罰を受けずに生きていることで、2人はお互いを想い続けることができる。ユリアの優しい心をキラはユリアから受け取ってる。天使に心が無いって言ったけど、キラはユリアを愛したり、私に色んなことを伝えたり、教えてくれたよ。キラは心をちゃんと持ってる。』

黙って私を見つめるキラ。私は、涙を必死でこらえた。