片翼の天使(短)

色んな所を飛び回って、最後にキラは海に連れて来てくれた。

『海に夕日が沈むの見たことある?』

私が首を振ると、

『え~!もったいないなぁ!あんないいもの見逃してたんだぁ!じゃあ、見に行こう!』

そう言って、真っすぐ海まで飛んでくれた。

『今更だけど、天使って片翼でも飛べるんだね。』

キラが笑う。

『飛べない天使もいるんじゃないかな。実際、皆の能力を知ってる訳じゃないから分かんないけど、俺って、実は少し特殊な天使だから。』

『特殊?』

まあ、普通じゃない気はしてた…。

『うん、天使って何かのスペシャリスト~みたいなのが普通なんだけど…例えば水を司る天使とか風を司る天使、火を司る天使、みたいにね。でも俺って何故か、だいたい使えるんだ。ちなみに、飛ぶ時は風を使ってる。だから落ちない!』

『そ、そうなんだ。』

なんか、色んなこと聞いちゃってるけど、そんなに話してキラは大丈夫なのかな?

『着いたよ!』

キラの声で前を向くと、海に浮かぶ夕日が見えた。息を呑むほど綺麗で、少しずつ空の夕日と海の夕日の距離が近づくのを、ただ黙って見入っていた。その2つの夕日が重なって消えていくまで…。

自然と涙が流れた。