片翼の天使(短)

どうしてキラが人を…ユリアを愛したのか、ただ暖かいってだけじゃなくて、生活していた環境もあったから。でも、人間だって、そんなにいいものじゃない。キラはユリアと最初に出会ったから言えるんだよ。私が最初に出会った家族以外の人は最低の大人だった。あの時の恐怖感は、絶対消えないから。

『う~ん、ちょっと暗い話題だったかな?
なんか楽しいことしない!?気晴らしに空飛ぼっか!』

そう言ってフワっと羽根を広げる。
キラの羽根、初めてちゃんと見た気がする。

『綺麗だね。光があたってるからなのかな、凄くキラキラしてる。』

片翼しかない天使。でももう、オカシイなんて思わない。無くした片翼には、色んな人の色んな想いがつまってるんだから。

『つかまって!』

そう言って片手を伸ばすキラの笑顔は、ユリアに笑う顔じゃなくて、いつも私に向けてくれる笑顔で安心した。

『落とさないでね!』

そう言ってキラの手をとると、グイッと引き寄せられた。私を抱き抱えるように支えると、フワッと飛び上がる。

初めて空を飛んだことも、キラの腕も、顔が妙に近くて恥ずかしいことも、全部がドキドキで、キラの顔が夕日で染まるまで、何も覚えてない。