………。

『目を開けていいよ。』

天使の言葉を聞き、静かに目を開けた。

目からは涙があふれていた。

重い口を開いて天使に尋ねた。

『ねぇ、今のって…。』

天使が少し苦笑いをしながら言った。

『うん、俺の過去。羽根を無くした理由。』

廊下にチャイムが鳴り響き、生徒達が足早に教室に戻って行く。

私は、どのくらい“夢”を見ていたんだろう。

あまりにもリアルで、まるで自分がその場にいたような気がして、すごく長い時間に感じた。

『とりあえず、教室…でも、その目じゃムリかな?』

天使が私の顔を覗き込んで言う。

『ううん、大丈夫。教室に戻る間に、涙も乾くと思う。』

そう言って歩きだした。


去り際にヤハヴェが言った言葉が気になる。


“女の想いを継ぐ者に片翼を持たせる。”


それが私ってことになるのかな。

『ねぇ天使さん。』

『ちょっ、ちょっと待って。その天使さんって何?』

私は当たり前の顔して答える。

『あなたがメタトロンだっていうのはわかったけど、まさか、その名前で転校してきたわけじゃないでしょ?
というわけで、今の名前を教えて。』

『寺島 キラ。』