―5月入学式から1ヶ月がたった。
新一年生となった人々は最初の頃より落ち着いてきて、
いつも一緒にいるメンバーもだいたい決まってきた。
教室の外には人々の楽しそうな声が聞こえてくる。



だが、一人だけ眉間にしわをよせ、不機嫌そうな顔をする女性がいた。

一年一組、出席番号6番綾瀬牡丹。
彼女は成績優秀であり、三年間の授業料が免除された。
この高校の入試では、一位であった。

そして、気になる容姿はというと…



雪のように白い肌



ぱっちりとした大きな瞳



顔は小さく、唇はある程度厚みがありぷっくりとしている。



腰までのばされた黒い髪は艶をもち、風になびいている。



そう。彼女は世間的に見て美少女である。
牡丹本人は全く気づいていないのだが…。


牡丹はあることで悩んでいた。
彼女の手には強く握りしめていたせいか、
今にも破れそうな一枚の紙がある。


(これ、どうしよう。)


彼女が眉間を寄せ、切なげに見ているその紙には
【生徒会勧誘】と書かれている。


(先生に入ってくれって頼まれたけど、入学してまだ1ヶ月だし
変に目立ちそう…。だけど、あんなに頼んできたし…あぁー!どうしよう。)



締め切りは今日の放課後。
今日は生徒会がある日らしく、今日までに決めてくれと紙を渡された。
本当はあまり乗り気じゃないが、先生があまりにも必死だったので
とりあえず保留とさせてもらったのだ。


またしばらくうぅーんと考えていると
上から声が降ってきた。


「牡丹ちゃーん!さっきから、眉間にしわをよせちゃって何ぶつぶつ言ってるの?せっかくの可愛い顔が台無しだぞっ」


可愛いらしい声の持ち主は
佐久間楓。牡丹の唯一親友と呼べる女性だ。
その可愛らしいふいんきとは裏腹に、結構腹黒かったりする。







「ねぇ、今腹黒って聞こえた気がするんだけど?」
「きっ気のせいだよ!」