放課後。
玄関の屋根下から外に出ることなく、重たくどんよりとした灰色の空を紅音は睨んでいた。
「時任、空を睨んでも雨は止まないからな」
隣をクラスメイトが傘をさしながら通り過ぎざまに冷たく言う。今日は誘ってくれないのかとほんの少し悲しく思いつつ、紅音は見送りまた空を恨みがましく睨んだ。
「くそう…俺が傘を忘れた時に限って雨が降るなんて…」
「時任くん」
背後からかけられた声に振り向くと、人懐こい笑顔を浮かべた生徒がいた。クラスメイトの栄暮美奈だ、と思い出す。小柄で華奢な出で立ちに、ストレートの黒髪ロング。確かクラスの男子が可愛いとか言っていたなとか思いつつ、接点がクラスメイト以外にまるでない紅音は内心首を傾げる。
「竹平くんが、生徒会終わるのを待つなら傘にいれて行ってもいいって」
「え、ホント!?」
要からの救いの伝言にパッと華やぐように紅音は笑顔を浮かべた。そんな様子に美奈はクスクスと笑う。
「よかったね。でも、私が知る限り、時任くんって雨の日ほとんど傘を忘れてない?」
「そうなんだよねぇ。俺、天気に嫌われているのかも」
「たんに雨男なだけだよ」
「それ、フォローになってないよ」
「え。あ、ごめんなさい。そんなつもりじゃなかったんだけど…」
少しばかりしまったと焦る美奈。素直な反応の美奈にはは、と紅音はおかしそうに笑った。
「そんなに焦らなくても。そういえば、栄暮さんは魔法使いの電話番号って知ってる?」
「魔法使いの電話番号?」