ーーーーまさか、時任さんに何かあった…!?
焦る気持ちを必死に抑えつつ、陣を展開させてすぐさまロゼは時任家へと姿を現した。
「時任さん!」
天井へと展開させた陣から姿を見せると、何やらキッチンの椅子に縮こまっていた紅音は顔を上げてパァッと輝かしい嬉しげな笑顔を向けてきた。
思わず、ロゼはたじろぐ。
「ロゼ!おまっ、お前来るの遅いよ!見捨てられたかと思った!泣くかと思った!むしろ泣いた!」
「あ…す、すみません。何があったんですか!?」
あの紅音が…というほどの付き合いでもないが、そう簡単に泣くことはなさ気の紅音が泣いたのだ。すぐさまロゼは紅音に問いかけた。
「あ、あいつが出たんだっ…」
「!!」
怯える紅音に、ロゼは顔を青ざめ目を見開いた。
不覚だっ…あんな事があって、すぐに時任さんを一人にするのは危険だった…!
「いつ来たんです!?何もされてませんか!?怪我とかっ…」
「少し前だ…今の所身を潜めてるみたいだけど…」
「!まだここにいるんですか!?」
「ああ。いる。俺にはわかる…」
真剣な顔で、確信を得ている紅音にロゼは面食らう。
時任さんには、まさか…何かと特別な力が…?
ハッと、紅音が目を見開いた。
「あそこだ!」
勢いよく振り向き指さした紅音に、ロゼもすぐさま構えて振り向いた。
「…ん?」
しかし、振り向いた先には誰もいない。
「時任さん、一体どこに…」
「そこだよそこ!その、冷蔵庫のすぐ横!」
冷蔵庫の横…?
じっと、目を凝らしていたロゼはまさかと思う物体を発見した。そして、認識したと同時に目を点に。
「………あの…時任さん、お聞きしたいんですけど…」
「な、なに?」
「時任さんの仰るものってまさか…ご「それ以上言うなあ!!!」
皆まで言う前に、カッと目を見開いて威圧を込めた紅音にロゼは閉口する。
「もうほんと無理。あいつだけは無理。何もかもが無理。存在が無理。とにかく無理」
「……」
ガタガタと震える紅音に呆気にとられていたロゼだったが、状況にやっと頭が追いつきため息。それはもう盛大に。
なんだ…あいつってゴキブリか…。
警戒して身構えていた分、脱力感が半端ない。