ふわりと包み込むような濃紺をしたソファに腰掛け、ロゼは向かい側に腰掛けるミカミと向かい合っていた。間に挟むテーブルには、メイドが用意した紅茶が置かれている。甘いものも用意されているが、こちらは減りが遅い。





「マリアの方から既に話は聞いていたけど、差異はないようだね」

「私もエイも、ありのままを報告しています。偽る理由などありませんから」





トゲを感じさせる物言いだが、ミカミは気にせずふむ…。と顎に指をかける。





「ありのままを報告……本当かい?」





細めたミカミの目は、笑っているようにも見える。反応しそうになり、なんとかロゼは堪えた。





「…どういう意味でしょうか」

「………君は今、契約主がいるようだね」





長い脚を組換えて、ミカミは変わりないゆったりとした口調で言った。顔には出さなかったが、内心ロゼは焦りを感じた。





「ええ。姉を探してほしいと」

「うん、俺の耳にもそう届いてる」





どっから届いたんだよ。

柄にもなく舌打ち混じりに内心呟いてしまうくらいには、ロゼは目の前のこの男が苦手というか、嫌いだった。





「誰かを探してほしい…それが家族だろうと、恋人だろうと、よくある願いだ。ただ、君は店で通信具を買ってるね」





ス、とミカミが手のひらをテーブルの上で翳すと、陣が現れ街らしき静止画が映った。深緑色をした吊るし型の看板が目印のある店から、籠を手に出てくるロゼの姿が映っている。ロゼの表情が渋いものになる。





「………」

「今は国も警戒態勢だからね。監視の陣も増えてる……それで、クロッカス。何故君は、通信具を契約主に?俺が思い当たるのは、契約主に危険がある場合ぐらいだけど」





ーーーー…どう、切り抜ける!?

表面上はすました顔を貫くロゼだが、内心はもう焦りまくりでテンパる寸前だ。

時任さんのお姉さんが今回関係ある事は幸いまだ暴露てない…はず。でも時任さんが何かしら関係しているかもしれないと、宰相は勘ぐってる。言えば、宰相の事だから時任さんを呼び寄せ徹底的に調べ上げる…。





「(そんな事、絶対にダメだ。契約主の願いと無事を保障するのが旅団の絶対!こいつに知れたら、時任さんが無事に済むはずない…)」





頭をフル回転させながら、間をもたせるためロゼはカップを手に取り一口飲む。ロゼが何を言うのか気長に待つようで、急かす様子もなく、ミカミは微笑を浮かべたまま待っている。