エイの心配なんて知る由も無い…そもそもエイという人物すら知らない紅音だったが、大丈夫かな?の問いにはノーを示していた。





「でっ……出やがった…!」





キッチンの椅子に縮こまっている紅音は、顔を青ざめている。

けっ…携帯っ…。

汗汗と服を弄るも携帯らしき感触は伝わらない。何故かと焦る脳が閃き導いた答えは……。





「(ーーーー携帯ベッドじゃん!!)」





思い出して絶望感にもう涙目の紅音だったが、はっとさらに閃いた。



「(そうだ。俺にはまだ奥の手があった)」





救われたような気持ちで、紅音は笑顔を浮かべつつ自身の腕を見つめた。

チャリ…と。紅音の左腕につけられた、オレンジ色をした小さな宝石がアクセントとなるブレスレットが揺れる。女物にも見えるそのブレスレットは、ロゼが昨夜手渡してくれたものだ。





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「時任さんに、此方を渡しておきますね」

「は…ブレスレット?」





…しかも、女物?

金色の鎖に、ちょこんと飾りとしてつけられたオレンジ色の宝石。ぱっと見女物にも見えるそれに、紅音は渋い顔をする。





「そのブレスレットには伝達の陣が仕込まれていて、通信機器になっています」

「携帯みたいなやつ?」

「そうですね。ただ、私の分しか登録してないので、私としか連絡は取れませんけど……もし、私がいない時に何かあったり用がある時は、そのブレスレットに私の名前を呼んでください。すぐに駆けつけますから」