「さて…」
ロゼが屋上を去ってエイは腰が抜けて座り込んでいる雪乃へと歩み寄った。
「大丈夫?怖かったよね…」
「…貴方も、さっきの人も…魔法使い?」
「違うよ。俺もロゼも、陣使いって言うんだ」
苦笑しながら答えたエイは、雪乃に手を貸す。のろのろと手を借りて立つ雪乃の背に手を添えてやる。
「どうしてアイツと契約したのか、聞いてもいいかい?」
尋ねられた雪乃は、一瞬の間の後泣くのを我慢するように唇を噛み締めた。
「……小さい頃から…年も近いから、茉希ちゃんとはよく遊んでもらってた…でも、昔から茉希ちゃんは可愛くて…私なんかよりずっと…だから、嫉妬したの」
一生懸命に虚勢を張ったような震えた声は、泣いているように聞こえる。
「在り来たりな話だけど…あの人が、茉希ちゃんを消してくれるって…だから私、茉希ちゃんがこの世からいなくなってくれるならと思って…」
「でも、途中で止めようとしたんだよね?」
驚き目を見張った雪乃が顔を上げる。優しく笑いかけるエイに、雪乃は戸惑い目を離せない。
「学校であんなに焦って急いでいたのは…病院に向かおうとしてたんでしょ?茉希ちゃんを助けるために」
「…違う…私、は…ただ、耐えられなくて…」
「本当に相手を消したいと思っている奴は、罪の意識なんて感じないんだよ。だから雪乃ちゃんは、茉希ちゃんを助けたかったんだ…そして雪乃ちゃんは、それだけ茉希ちゃんの事が大好きなんだよ……ね?」
ぐ、と耐えようとしていた雪乃だったが、あまりにも優しい、その言葉は涙腺を崩壊させた。
「…っ、あああああああ‼︎」
子供のように声も涙も我慢せず泣き出した雪乃の頭をエイはいい子いい子とするように撫でてやる。
「今回の事は…誰にも秘密だ。ただ、二度と心の隙間に囁きかけられても、耳を傾けちゃダメだよ…」
必死に頷く雪乃に、やっと安心したエイは肩の力を抜いた。

