黄昏御伽噺






夕陽が射し込む校舎内をロゼとエイは並んで歩く。一つ一つ教室を見て回るが、二人が探す目当ての人物は見つからない。





「…暗くなる前には見つけたいな。暗いと陣の光が外に見えるだろうし」

「まだいるの?」

「ああ、気配は感じる…ただなぁ、俺もまだ漠然としか分からないから…」





どうしたものか。顎に指をかけるエイは考えていたが、くるりと踵を返して廊下の端へと歩きだす。不思議そうにしながらもロゼも大人しくついていく。





「向こうから来てくれたぞ」





階段を駆け下りてきた雪乃は、立ちはだかっていたエイとロゼに目を丸くして踊り場で足を止めた。





「あれ…」

「どうしたの?」

「ロゼ、あの子か?」

「そうだけど…なに?何かあった?」





知らない二人に見つめられ、動くに動けない雪乃をエイは目を細めて見つめる。





「…………あの子からは残り香ぐらいしかしない…気配はもっと別だ」

「え…⁉︎」

「ねえ」





ビクリと声をかけられた雪乃は一歩下がる。その様子にエイは警戒心を少しでも解こうと柔らかく笑いかけた。





「怖がらないで…君に害を加えるつもりはないから。司波雪乃ちゃんだよね?」

「…………はい…」

「雪乃ちゃん、君の願いを叶えてくれた人は今何処に?」

「…………」





ぐ、と雪乃は手摺にかけて手に力を込めた。悩んでいる様子に目敏く気づいたエイは、もう一押しと声をかける。





「口止めされてるんだろうけど、大丈夫。俺らは雪乃ちゃんを助けに来たんだ」

「…私を、助けにですか…?」

「そう…今、アイツは何処に…?」

「…………」





口を閉じてしまった雪乃だったが、ゆらゆらと揺れる瞳をエイは見つめ返す。





「……………病院……」





数秒して、か細く雪乃が答えた。





「総合病院…茉希ちゃんの、ところ…」

「…ありがとう」





にっこり笑ったエイが、一瞬にして雪乃の背後へと移動した。





「一緒に来てね。何かあったら大変だから」

「え…」

「ロゼ」





そっと手を取るエイに硬い表情を崩し赤く頬を染めた雪乃。ロゼはエイに頷き返すと陣を自分の足下、エイと雪乃の足下へと展開させた。