黄昏御伽噺






学校へと行っている紅音がいない時任家。一人リビングで読み終えていない本を読み進めていたロゼは、前触れなく本から顔を上げた。一瞬の間の後、天井近くにパッと淡いオレンジ色をした陣が現れた。





「…よっ、と。少し遅かったか?」





パタリと本を閉じるロゼへと現れ出たエイは尋ねた。





「ううん、ちょうどいい頃だと思う」

「それで、今はどこだ?」

「多分まだ学校…いなかったら、事前に調べてあるから家まで向かうつもり」





立ち上がったロゼは指先を空中に軽く滑らせる。後をついてオレンジ色の光が線を描いて行く。





「お前の契約主は知ってるのか?」

「まさか。巻き込むわけにはいかないでしょ?」

「…それもそうだな」

「さ、早く行こう。感づかれて逃げられでもしたらエイが来た意味がないし」

「ああ」





出来た陣へと二人は飛び込む。陣をくぐり抜けた先は、紅音が通う学校の屋上だった。帰宅する生徒の姿は時間的にあまり見当たらず、グラウンドに部活中の生徒の姿が見える。





「お、野球。俺たちの国でもやればいいのにな」

「あるじゃん。似たようなのが」

「あんな陣を展開しまくりのは邪道だろ」





認めないと顔にありありと浮かべて首を横に振るエイだったが、ピクリと眉を動かすと校舎内へと続く扉を見つめた。





「…………うん、いるな」

「やっぱり…」

「力は…まだまだだな。やっと使い慣れて一週間ってところか」

「今ならなんとかなる?」

「いや………どうだろ…とにかく見つけねえと」





扉を開けて校舎内へと足を踏み入れる。





「あ、待って!」

「?」

「服を変えなきゃ…目立つから」

「ああ、そっか」





思い出したように呟いてエイは陣を展開させた。同じようにロゼも陣を展開させ、二人は指定制服へと服装を変える。





「…なーんか、違和感しかないよなぁこっちの服って。特に制服?カッチリし過ぎな気もするけど」

「時任さんから言わせれば、私たちの服の方が隣を歩きたくないそうだよ」