午前中授業で帰っていた紅音は、帰路の途中にあるケーキ屋に来ていた。
「「あ」」
ばったり出会したのは茉希。
「こんにちは」
「こんにちは。この前パン踏んじゃった子だよね。あの時はごめんね」
「いえ。食べれたんでいいですよ」
…うん、三日で飽きることってないなきっと。
ふわふわ笑う茉希に内心紅音は確信する。
「先輩、ここよく来るんですか?」
「うん。えっと…」
困ったようにこちらを見る茉希に時任と学年を名乗る。
「時任君もよく来るの?」
「帰り道なんでたまに。ここ、ケーキだけじゃなく軽食もあるから」
「でも、甘いものだよ?ガッツリじゃないし、男一人って勇気あるね…あ、座らない?」
誘いに乗り窓際の空いていた席に向かい合う。
「最初は抵抗ありましたけど、慣れるとけっこーどうでもいいかなって」
「時任君みたいにカッコいいと、逆に甘いものも似合うしね」
「先輩みたいな美人に言ってもらえると嬉しいですよ」
ノリが似ていたのか話は思いの外弾んだ。食べ終わってもしばらく話していると、茉希の携帯がメールの着信を報せた。
「あ……ごめんね、用事入っちゃった」
「いいですよ。彼氏ですか?」
「あー…彼氏は最近別れちゃったから違うよ。イトコから」
気まずそうに苦笑いした茉希に紅音も眉を下げて笑い返す。
「ほら、一年に司波雪乃っているでしょ?あの子」
「へえ!司波さんとイトコだったんですね。美人と可愛い子がイトコって凄いですね」
「ありがと。でも、ホント雪乃は可愛くなったから、私も負けてられないや」
冗談っぽく笑って茉希が席を立つ。
「じゃあね時任君」
「さよなら」
笑顔で茉希を見送り残っていた紅茶を飲み干す。
浅生先輩と司波さんがイトコかぁ。始めてしったな。
明日要に話そう。そう思って紅音も席を立ったのだが、翌日にはそんな事ぶっ飛ぶ話題で持ちきりだった。