淡い水色をした冷たく細かな結晶が、ちらちらと空から降り続く。一面が淡い空色に染まった街を、服を戻してしっかり防寒したロゼが速足に進む。
「そんなに急ぐと瑠璃みたいに転けるぞ」
足を止めて空を見上げれば、陣が現れていた。そこから現れ出たのはたった今会いに行こうとしていたエイだ。
「王宮眷属は暇なの?わざわざ出迎えてくれるなんて」
「わざわざ出迎えてやった相手に随分な物言いだな。王宮じゃ話しにくいかと思ってよ」
こんなやり取りは挨拶がわりと同等だ。着地したエイは、おちゃらけた空気を一変させた。
「それで?見つけたって本当か」
「多分…微かに感じたくらいだし、うろ覚えだけど」
「とりあえず、俺の家に行くか。誰に聞かれるかわかんねぇし」
ぱっと陣を展開したエイに頷き返す。展開された陣を通り抜けると、その先は薄暗い部屋だった。暗い赤茶色で統一された部屋を見渡し、ロゼは窓際に近づくとカーテンを手早く開け放つ。
「家をいくつか持つのはいいけど、管理はしっかりしなよ。陣を設置するとか」
「はじめはそうしてたけど、あんな細々した陣を設置するのが面倒で。滅多に来ないところ以外は手作業にしてんだよ」
窓を開け放つと、こもっていた空気が冷たい空気と入れ替わった。
「何か飲む?」
「リッペル」
答えながら内心思い出し笑いをする。紅音にコーヒーと似たようなものがあると言ったが、実はリッペルがそれなのだ。
「さて、じゃあ話を聞こうか」
カップを持ってきたエイと向き合い、ロゼは紅音と一緒にいた司波雪乃を思い出しながら話し出した。