「俺は彼女の傘にいれてもらうから。じゃあな」
と、要になんとも薄情に置いて行かれて数分。紅音はどうこの雨降りの天気を打開するかと頭を悩ませていた。
「時任、雨降る度にお前のその悩む姿を見てる気がするんだけど」
「気のせいじゃないかな。というか小言を言うくらいなら入れて行ってくれないかな」
「男と相合傘とか…ないよねぇ」
「その笑顔ムカつく。お前の存在がないよ」
通り過ぎざまに小言を言って去って行ったクラスメイトの背中を睨んで見送る。
「あの…」
遠慮がちにかけられた声に振り向く。
「あ。この前の…司波さんだよね」
「この前はありがとうございました」
折り目正しく頭を下げた雪乃にいいよ。と笑う。ほっと微笑った雪乃はふと、紅音の傍に今の天気ならばあるだろうものが無いことに気づく。
「傘、忘れたんですか?」
「え?ああ…うん」
情けないので曖昧に笑うしかない。
「じゃあ、入って行きますか?」
「え!?いや、司波さん電車でしょ」
「先輩をおくって行くくらいいいですよ」
「いやー…流石に悪いし…」
相手が男だったり、行き先が近かったりしたら願ったり叶ったりだったが……。
「先輩さえ良ければどうぞ」
「うーん…」
「時任さん!」
濡れるのも嫌だしじゃあ…。
紅音がお言葉に甘えようとした時、明るい声に呼ばれて二人してそちらに顔を向ける。

