四時限目の授業を受けていた紅音の耳に、昼休みを知らせる鐘が鳴り響いた。
「次の時間までに終わらせるように。じゃあ終わり」
「きりーつ…気をつけ、礼」
周りが頭を下げている中紅音はもう教室を飛び出していた。後ろで先生が何か叫んでいるが気になんかせず、向かう先は購買。
「あ、くそ!もう人がいる」
体育終わりの生徒が既に集まっていた。購買とグラウンドは教室からよりも近い。負けじと紅音は隙間に体をねじ込み目当てのものを探す。
「う……潰れる…あ!」
見つけたパンをなんとか入手しご満悦で教室に帰ろうと踵を返すと同時に、前方から走ってきた生徒とぶつかった。倒れはしなかったが手からパンが零れ落ち床に落下したかと思うと、ぶつかった相手がそれを踏み潰す。
「あーーーーっ!!」
思わず絶叫。
「ごめんなさい!」
「……あ…いいよ、別に」
残念に思いながら無残に潰れたパンを拾う。
…大丈夫だ、きっと食える。中身ぶちまけちゃってるけど、まだ食える。
「あの…良かったらこれ」
差し出されたのは健康食品。そこで始めて相手の顔をみた紅音はあ。と内心面食らった。ぶつかった相手は浅生茉希だった。
「お金、持ってないの。代わりにこれあげるわ」
「え…でも、浅生先輩…ですよね?先輩はいいんですか?」
「私はお弁当があるから。これは軽食にって持っていただけ」
はい、と渡されたそれを受け取る。
「パンごめんね」
頭を下げた拍子に背中まで伸びた髪が揺れた。急ぎ足にその場を去って行く茉希を見送り、教室へと戻った紅音の第一声。
「美人にもらうと健康食品も高級食材に思えるよ」
「それは良かったな」
要は彼女にでも作ってもらったのかファンシーなお弁当を食しながら相槌。
「顔ちっさいの。目もぱっちり。手足とかすらっと」
「時任が美人の良さに気付いたのならそれはそれで俺は嬉しいよ」
「素晴らしく棒読みだけど。あ…」
「ん?….あ」
雨だ。
窓の外を眺めた二人の声は見事にユニゾンした。

