「ただいまー…って…何してるの?」
姉を見つけてもらうため、最近入り浸っている魔法使いならぬ陣使いのロゼが、リビングの床一面に古びた分厚い本を散らかしていた。あーでもこーでもないとブツブツ呟いていたかと思うと、あ。とこちらに気づいた。
「おかえりなさい時任さん。散らかしてしまってすみません、ちゃんと後で片付けますから」
「それはいーけど…何か調べ物?」
「はい。お姉さんを見つけるため、何か他に方法がないかと本を調べてるんです。もしかしたら応用出来るものがあるかもしれませんし」
「へえー」
踏まないよう注意しながらリビングに入り、手近にあった本を一冊手に取る。ワインレッドのアンティーク調の厚紙の表紙には「Aー1」とあった。
「(うわ読めない…)」
めくってみれば記号のようなものが羅列していた。似てるもので言えば、アラビア語だろうか。それとも違う感じだが。英語すらままならないのに最早どこの言葉だと紅音が固まっていると、クスクスと小さく笑う声が。
「時任さんには読めませんよ。これらの本は全て、陣使いについて知識を身につけた人にしか読めませんから」
「なるほど…」
潔く本を置く。
「それで…何かあった?」
「そうですねぇ…人探しの陣は一応どれも試したんですが、やっぱり見つかりませんでした。試しに追跡の陣も発動させてみましたが、エラーばかりです」
「大半が異次元すぎて分からないけど、とりあえず手詰まり状態って事だね」
「そうですね」