「どこまで帰るの?」





答えた雪乃の行き先に、美奈は一つ頷いた。





「じゃあ、一緒に帰らない?私もそこに住んでるから」

「え…!?」





申し出に雪乃は驚いたように目を見開く。





「電車代貸してあげる。あそこまで歩くのは遠いよ」

「でも…あの…」

「それでいいじゃん。別に先輩だからとか気にしなくても」

「そうだよ。迷惑なら、無理にとは言わないけど」





慌てて雪乃は首を横に振る。





「め、迷惑なんかじゃありません…!すみません……ありがとうございます!」





嬉しそうに何度も頭を下げる雪乃に紅音は思う。





「(うん。マイナスイオンだなぁ)」

「荷物は教室?」

「はい。あ、すぐ取ってきます」

「急がなくていいよ。待ってるから」





パタパタとスリッパを鳴らしながら廊下の向こうに雪乃は走っていった。





「時任くん、司波さんと知り合いだったんだね」

「たまたま定期券探しているのを見つけただけだよ」

「そうなの?」





きょとんとした美奈に頷く。





「泣いてる様子だったから、さすがに放っておけなかったんだ…それじゃ、後は栄暮さんに任せて帰るな」

「あ、うん。またね」





手を振る美奈に軽く振り返して、紅音は帰路について。