黄昏御伽噺








「ちゃんと本人にも許可取ってるし、違法ではない証拠としてほら!本人のサイン入り。更には買う奴にはちゃんと、このノートにクラスと名前を書かせつつ、個人情報は絶対保護!」

「お前そこまでする?」

「柚のその見上げた根性俺好きだよ」





ドン引きする要と、生暖かい目を向けて心の距離を取る紅音に柚は落ち込みつつもめげない。





「…まあ、ともかく。初日からしばらくは上々の売れ行きだったんだけど…ここ最近、低迷中と言いますか……だから、一回も買ったことない奴に声かけてんだ」

「評判なんじゃなかったの?可愛いし、むしろもっと写真を撮って欲しいってなりそうだけど」

「ほら、三年にも美人な先輩いるだろ」

「浅生茉希」





え、と柚が目を丸くして要を見る。方程式を解き明かしてそれを当たり前のごとく答えたように、今まさに言おうとした名前を言った要に驚く。彼女以外興味ないのでは?そんな柚の心中察して、紅音が苦笑する。





「要は美人には反応するから。可愛い系より美人系?」

「なるほど。彼女一途かと思いきやの竹平の新たな一面が知れた」

「撮るな」





どさくさ紛れにシャッターを押した柚に要が非難めいた目を向ける。





「最近その浅生センパイがまた美人になったって評判でな。そっちに客足も流れてんだ。ほら」





ポケットに入れていたケースから取り出した写真を、柚は紅音と要に見えるように裏返した。派手すぎず地味すぎない、しかし華やかさのある生徒がこちらに笑いかけている。





「なるほど美人。けど、美人は3日で飽きる…嘘ですごめんなさい美人サイコー」





隣からのハンパない威圧に紅音も関係ないはずの柚も硬直していた。





「……で、まあなんだ。興味ないなら無理にとは言わないさ。まだ声かけてない奴もいるし」

「そうしなよ。俺も要も興味ないし…まあ可愛いけど」

「俺も美人と彼女以外に興味ないし…まあ可愛いけど」

「意外と竹平ってサイテーの部類に入るのか?つか、じゃあ買えよ」

「「いらん」」





「ちぇー」と柚はまた別のグループに声をかけ始めていた。