友人連れや恋人同士、親子などの姿で賑わう市場の一角に構えるモノクロのお店に、ロゼ、エイの姿があった。周りにはダーツやビリヤード、チェスなどを楽しむ人々ばかりだが、二人はカウンターにの端に座っているだけだった。





「契約主の姉が見つからなかった、ねぇ…」





考えているようで考えてないような顔でエイが頬杖をついた。それにロゼは少し不機嫌そうに睨む。





「私の陣を疑うの?」

「いや、そんな初歩的な陣を失敗なんて考えらんない…だから考えるべきは、〝なぜ痕跡がなかったのか〟だ」





言いながらエイはお皿の上にある青色のひし形のものを一口食べた。





「…まあ、俺たち陣使いが約一月前で考えつくのは、〝アレ〟との関係性だけどな」

「うん…だけど、確信も何もない状態だから、下手に動けないし…」

「とりあえず、まだ願いを叶えてないんだから契約は続いてるんだろ?その間に何かしらの手がかりを探してみろよ。上にはまだ内緒だ」

「分かってる」





店を出た二人は、霧のような淡い色のヴェールに包まれた王宮を見上げた。幻想的なそれを、二人は警戒するように目を細めて見つめる。





「あの王族にだけは早まった報告はダメだ。バレないようにな」

「そんな事言うくらいなら、いい加減王宮眷属なんか辞めればいいのに」

「生憎と、俺は辞めるわけにはいかないんでね」

「あっそ」





ひらひらと後ろ手に手を振るエイに呆れたように溜息をして、背を向けたロゼは家へと歩き始めた。