「どういう事?」
「先程使った陣は、この世界に痕跡が存在する限り、絶対に捜し出します。それなのに紅音さんのお姉さんは、この世界には存在しないと出ました」
「……死んでるの?」
恐る恐る尋ねれば、ロゼは「違います」と首を振る。
「死んでいようが、肉体が、遺骨が……骨まで消し去られようが、痕跡は残ります。なのに、存在エラーとなるということは、お姉さんは文字通りこの世界から消えたと言うことになります」
「消えたとか、言われても死んでますって言われるより実感ないんだけど。意味わからない」
「私もわかりません…」
紅音はロゼを見つめた。騙している様子も、からかっている様子も感じられない。ならば考えられるのは…。
「失敗とか?」
「有り得ません」
断言したロゼに紅音は面食らう。
「この程度で失敗なんて、私に有り得ません」
人によれば癪に障る物言いだが、紅音にとっては頼もしい言葉だった。もしかしたら、姉を見つけ出せるのはロゼだけなのではとすら、この短時間で決定付ける程だった。
「頼もしいね…だったら、絶対に見つけ出してよ」
「はい。このロゼ・クロッカス、必ずやお姉さんを見つけ出し、貴方の願いを叶えますよ。紅音さん」
「うん。ただ、一ついい?」
「はい」
友好的な笑顔のまま、紅音は言った。
「俺の事を名前で呼ばないで。それだけだよ」
「………………………はい?」
固まって顔をひきつらせたロゼに、紅音はにっこり笑っていた。