家に帰った紅音は、コンビニで買ったお弁当やお菓子をテーブルに置いた。
「自分で作ったりしないんですか?」
「あ、家にいたんだ」
ひょっこり廊下から現れたロゼは笑顔で軽く頭を下げた。要が来る直前に誰かが来るからと、ロゼは一瞬のうちに消えたのだ。どこにいるのかと思えば、我が家にいたとは…。
「ロゼは自炊するの?」
「たいていは自炊ですよ。作りましょうか?」
「…ちょっと気になる」
この世界の者ではないだろうロゼの料理は気になる。快く頷いたロゼがお弁当に指先を向けると、いきなり陣が現れて、お弁当は見たことのないような、おそらく魚だろう料理になった。
「もとが魚メインのご飯だったから、魚料理になっちゃいましたけど」
「自炊って、魔法でやるものなの?」
まさか自炊と言ってこんなパッとされるとはと、目を瞬かせた。そんな紅音の態度に慣れた様子でロゼは頷く。
「陣使いはたいてい陣に頼りますよ。一般の人は一からやりますけど、陣使いは材料さえあればどうとでも」
使い主のインスピレーションにもよりますけど、とロゼは付け加えた。
「こういうのは、自炊とは言わないと思う」
「でも、便利です」
「うん。まぁ、羨ましいよ。栄養バランスもよさそうだし」
ぽかん。となぜか見てきたロゼ。
「え、なに?」
「いえ。非難して、羨望した人って私は始めて見ました」
「思っていて口に出さなかっただけかもよ。で、食べていい?」
「あ、どうぞ」
何気に、紅音の口にマッチの味付けだった。