「とりあえず、お姉さんの写真はありますか?」

「必要なのか?」

「単純に顔がわからないと捜しようがないだけです」

「…ああ」





当たり前のように言ったロゼに、紅音はそこはファンタジックじゃないんだな、とちょっと思う。ほんの少し落胆しつつ、携帯を取り出す。





「携帯に写真が入っていたと思う………あった」





写真を見つけて、紅音はロゼへと携帯を手渡して見せる。画面には明るい茶系の色味をした紅音と違い、落ち着いた色味のブラウンの髪色をした、大人しそうな女性が写っていた。





「双子ですか?」

「いや、二つ上。だから今は大学一年生」

「似てますねぇ」

「よく言われるよ」





写真を確認したロゼは「あ」と思い出したように紅音を見た。返してもらった携帯をポケットにしまっていた紅音は、何かと首を傾げる。





「ちなみに見つけるまでに3時間ほどかかりますから」

「そんなに!?」

「これでも早いほうですよ。嫌なら止めますけど…」

「…いや、続けて」

「はい」





にこっと笑ったロゼは空中に指先で何かを描き始めた。文字のようで、五芒星を中心に指先を動かすたびに、光が見たこともない英字のようなものや数式を象っていく。





「『黄昏からの使者よ、捜し人を焙り出せ』」





空中に描かれた陣が、オレンジ色に輝き、目の当たりにした光景に紅音は目をこれでもかと見開いていた。

ーーーー本当に、現れた魔法使いならぬ陣使いは…本当に、姉を見つけてくれるのだろうか?