『「ロゼ」。そう呼んでください』
「ろ、ロゼ?」
なんで、と尋ねる前に、いきなり携帯からオレンジがかった金色に光る丸い円状のものが部屋いっぱいに現れた。
まさか悪魔でも召喚してしまったのか。
そんな不安を抱きながら光る円を見上げていると、中心からつま先が出てきてぎょっとした。
「(え、やっぱり悪魔召喚?)」
やべ、地球滅亡させちゃうのか?
なんて紅音が軽い現実逃避している間に、つま先から足首、膝、腰が徐々に姿を現してきて、ふわりと揺れるスカートから、その恐らく人はどうやら女のようだ。
「(これが…)」
光の円の中から姿を現したのは、紅音とあまり年が変わらないのではと思える女。絵本などの御伽噺から飛び出てきたような、そんな雰囲気に目を見張る。
「(魔法使い…?)」
女が地に降り立つと、円も光も消えた。一瞬の沈黙の後、異国風の服を着た女は紅音を見つめると笑顔を浮かべた。
「はい!ご運がよろしい貴方の願いをこのロゼ・クロッカスが叶えます!」
「…はい…」
「………」
「………」
「……はぁ」
反応の悪い紅音に、ロゼは浮かべていた笑顔を引っ込めると憂鬱そうな顔をした。
「ほらね。半信半疑な人の前に、出ると気まずい空気になるから嫌なんだよ」
「…本当にアンタが魔法使いなのか?」
小さく何か呟いていたロゼに、恐る恐る紅音は問い掛けた。