10桁の番号を押しても、やはり繋がることはなかった。





「要のやつ遅いなあ…」





携帯に表示されている時間を確認すれば、30分ほど待っていた。





「生徒会なんて大変そうな役職、よく立候補したよな」





呟いて、手に持つ携帯を見つめる。軽く振ったり、右手に左手にと持ち替えて…。





「………」





また、諦めもせずに10桁の適当な数字を入力していった。押し終えてしばらく待てば、最近聞きなれてきた機械の女性の声…ではなかった。





『はい。こちらそちらで噂の魔法使いです』

「………」





なぜだか吐き気がこみ上げそうになった。

驚きすぎてなのか、なんなのか。

紅音は咄嗟に反応できず、全身から血の気が引いたのを感じて数秒、携帯の画面を見つめた。通話中…その文字があった。





『願いごとを叶える前に、ちょっといいですか?』

「…は?」





苦手な理数を解いている時より頭が、まるで糸がからまったようにこんがらがっている。通話相手はそんな紅音とは対照的な、落ち着き払ったソプラノの声で告げた。