「にしても、公爵様が来るからロゼのやつは来なかったのかねぇ」

「…そういえば、ロゼさんは?」

「家にいるよ。あ、でも今は甘いもの食べたいからって買い物に行ってるかもな」





その予想は当たっており、ロゼは市街地とは違う、様々なお店が立ち並ぶメインストリートに来ていた。めぼしいお店で買った、美味しそうなお菓子を編み籠いっぱいにいれて、ロゼはそろそろ帰ろうとしていた。





「ロゼ!」





元気いっぱいの声に呼ばれ、前方を見れば金色の髪を太陽に反射させながら手を振るエイを見つけた。隣にはロゼとは違う大振りの籠を持ったメイド服の瑠璃の姿もあり、ペコリと折り目正しくお辞儀していた。小走りにロゼは二人に近寄る。





「やっぱりお菓子を買っていたな」

「2人は?」

「瑠璃がサキノ公爵に出すジャムの買い物を頼まれたから、ついでにお前を捜していたんだよ」

「ロゼさん…お勧めのジャムはありますか?」

「それが買い物?侯爵婦人が好んでいるものを買えばいいのに」





きょとんとしてロゼが言うと、エイが愉快そうに笑った。





「その侯爵婦人が、食べるのはあいつだから、適当なものでいいと。なんなら不味くても腐っていてもいいと」

「…でも、さすがにお客様にそれは…」

「なるほど。婦人らしい…」





少し考えて、ロゼは自分がよく行くジャム専門店に案内した。とりあえず好みの問題もあるが、不味いものはないだろうということで、適当に選んで瑠璃は購入したのだった。