ーーーーガッシャーン!!
「ああ!もう、なにしてんのさ瑠璃!」
「ご、ごめんなさい…!」
「これで何度目だよ…気をつけておくれよ?」
「はい…」
瑠璃は落ち込みながらも頷く。赤毛を揺らして去って行く貴婦人の背中を見送り、廊下に散らばった元お皿の欠片を拾い始める。黒いメイド服のスカートを軽く広げ、拾ったものをそこに集める。
「また派手に散らかしたな」
手にしようとした欠片が別の手に拾われ、目を瞬かせながら瑠璃は顔を上げた。
「エイさん…」
「よ」
いたずらっ子のような笑顔と共に現れたエイに、嬉しそうに瑠璃は微笑み返した。
「王宮からの…帰りですか?」
「そ。まあ、神官どものお小言を聞いてあげただけだけど」
「…やっぱり見つからないんですね」
苦しそうに表情を曇らせた瑠璃に、エイは安心させるように笑って頭を撫でる。
「ま、そのうちひょっこり見つけるさ。王宮眷族の陣使いが、総出で捜してんだからな!」
エイの笑顔に、瑠璃もつられて笑顔を返した。
「それはそうと、今日は何かパーティーでもあるのか?」
「どうして…」
「屋敷内がいつもより慌しいからな。それに、なんだか妙にピリピリしているし、ただのパーティーではないな」
「うん…今日は、サキノ公爵様がおいでになるの」
「へえ。よく招いたな」
「相手が相手だし、断る理由が底をついたからって…」
「そんな理由かよ」
はは…と失笑するエイに、瑠璃も苦笑いを返すしかない。