一瞬キョトンとしていた美奈だったがすぐに頷いた。
「うん、知ってるよ。結構前から噂になってるし、テレビでも取り上げられていたから」
「そんなに有名なんだ」
「実際、うちの学校でも何人か繋がったとか聞いたよ」
「え、誰?」
「うーん…転校しちゃっていたり、入院や卒業しちゃっている人もいるからなぁ…」
「へえ」
話を聞きながら紅音は、ポケットにいれている携帯を無意識に軽く握り締めた。
「…それじゃ、俺教室にでも行って要を待つから」
「あ、ごめんなさい。引き止めちゃって」
「全然。またね、栄暮さん」
「また明日。時任くん」
赤い傘をさしながら笑顔で挨拶した美奈に軽く手を振って背を向ける。靴を履き替えて最上階まで階段をあがり、向かった先は今は使われていない空教室。以前、要と秘密裏に作った合鍵を取り出して中に入ると、しっかりと鍵をかけて奥にこっそり用意したソファーに腰掛けた。
「実際にいたんだ…」
取り出した携帯を見つめたままポツリと呟く。要にはああ言ったが、あの日から1日1回は必ずかけていた。デマだろうが、話になるくらいなのだからもしかしたらと、諦めていなかったのだ。
「10桁の番号を…か…」
ゆっくりと、願いを込めるように番号をうっていった。