「お兄ちゃんだけじゃなく、私を知ってる人とすれ違っても分からないように整形もしたわ。服装も言葉使いも変える為に水商売を始めたの。……七年も隠れながらやるのは大変だったけど……。」

梅子が苦笑する。

「……お兄ちゃんが病院に運ばれて……私、居ても立っても居られなくなって、慌てて病室へ向かったわ。……母さん、痩せてたね。少しショックだったなぁ。」

私の顔変わってて、私だって分からなかったみたいだけどと続けて。

僕はただ、黙って話を聞いた。

「お父さんとお祖父ちゃんに会えなかったのは心残りだけど……。途中まで、このままお兄ちゃんの彼女になれるんじゃないかって本気で思った。……だけど、時折見せる寂しそうな表情を見ていたら、……どうしようもなくて……。」

『好きな人』という事の前に、『家族』。

その葛藤が、手紙を作った切っ掛けになったという事か。