退院の日。

母に用意された私服に着替え、家に帰る準備をした。

母に付き添われ、松葉杖を突きながら受付に向かう。

目が見えないのだから、車椅子の方が良いんじゃないかと諭されたが、それは断った。

しかし、母の誘導が無ければ歩く事すら儘ならない状態だ。

人で賑わう広いロビーに到着すると、一人の看護士さんが、僕に声を掛けた。

「高橋……尚輝さんですか?」
「あ、はい。」
「手紙を預かっていますよ。」
「?」

大した入院生活でも無いのに、一体誰だろう…と思いながらも受け取った手紙には、触り覚えのある凹凸。





オニイチャンへ





「…。」

僕は最初の時程驚かずに、まず辺りに耳をすませた。

老若男女、色んな人の声と足音で、ここから特定の人物を捜し出すのは困難を極める。

溜め息を吐くと、封を切り、中に入っている手紙を取り出し読んでみる事にした。