「……。」

母も居るし、僕がこんな状態ではさぞかし居心地が悪いだろう。

そう思っていると、今度は絵夢から口を開いた。

「あの……他の家族の皆さんは……。」

僕というより、母に訊いたのか。

母は少し寂しげに応えた。

「……夫と祖父は亡くなって……妹も……。」

つい最近死んだ事になった、とは僕がいる手前、言えないだろう。

母は口を噤んだ。

「そう……なんですか。」

自分が訊いた質問に後悔したのか、絵夢は一段と声のトーンを落とした。

さらに居心地の悪い空気が流れる。

でも、わざわざ病院に駆け付けてくれた見舞い人に僕は素直に感謝した。

「絵夢……ありがとう。」

そう言うと、絵夢は色んな感情が入り雑じった声で応えた。

「ううん、尚輝早くよくなってね。あんまり長居しちゃ悪いし、アタシこれから仕事だから……。」
「ああ、良いんだ。ありがとう。」
「じゃあ、失礼します。」

最後のは母に言ったのだろう、そのまま絵夢は逃げるように早足でその場から去った。