「尚輝……残念だけど、母さんは信じられないよ。」
「何で……。」
「母さんね。この前失踪者宣告された時に、その書類を提出したんだよ。」
「……え。」

病室がシンと静まった。

何を言われたのかよく理解出来ない。

「……お爺ちゃんの遺産相続の為なんだよ。梅子には悪いけど、もう帰ってくる事は見込めないって、この前の法事で親戚達に言われてね。……せめて、お前には少しでも幸せになってもらいたくて……。」

耳鳴りがする。

目眩もする。

吐き気もだ。

「ごめんね、ごめんね……。」

唖然とする僕の耳には、謝る母さんの嗚咽がいつまでも聞こえている。





闇が深くなった気がした。