瞼は開けなかった。

どうせ、そこにあるのは同じ暗い闇だから。

だが、意識を取り戻し、夢からは覚めた。

ピクリと手足を動かそうとすると、瞬間大腿部に鋭い痛みが走った。

「痛っ……。」

と、声を上げると近くに人の気配を感じた。

「尚輝……!意識が戻ったのね?」

母の声だ。

状況が把握出来ないでいた。

何故僕はベッドで寝かされていて、足に激痛が走るのか。

母に尋ねてみた。

「母さん……何、これどうなって……僕は一体……。」

支離滅裂で、言いたい事が纏まらない。

それでも母は、真剣聞いて応えてくれた。

「尚輝、貴方事故にあったのよ。ここは運ばれた病院なの。大事には至らなかったけど、足の骨にヒビが入ってるって。頭も打っているらしいから、後で精密検査するかもってお医者さんが言ってたわ。」

事故……そうか、あの時……。

僕は途切れた記憶を掘り返して、納得した。