「紙の下に五円玉を置いて、真ん中をボールペンで突いただけだよ。」

成る程、少し穴は空いてしまうが、それっぽくは出来る訳だ。

しかし、そんな面倒くさい作業をやって、文章を作るとは……。

「ね、読んでみてよ!お兄ちゃん!」
「ん?あ、ああ。」

僕は手を紙にスライドさせると、点字の意味を読み取った。

点字による漢字は「漢点字」と「六点漢字」というものがあるが、一般的には平仮名が多い。

六個の点の組み合わせで「あ~ん」、英数字を表現している。

梅子が覚えたのも平仮名によるものなのだろう。

それでも、そこに書いてある内容はすぐに分かった。





イツモアリガトウ、オニイチャン。

UME





「……。」
「ねぇ、読めた読めた?」

僕にちゃんと伝わっているのか気になるらしく、梅子がしつこいくらいに訊いてくる。

馬鹿……こんなの、わざわざ点字で作らなくても……。