「……ん、高橋さん。」
「え?」

気が付くと僕は俯いたままフォークを回す手を止めていたようだ。

パスタは絡み付いたまま、冷めてしまっている。

「どうしたんですか?気分でも悪くされました?」
「あ、いや……そういう訳じゃないんですけど……。」

いつもの埋め合わせをする為に僕から誘った筈なのに、これじゃあ反って気を遣わせてしまったようだ。

僕は一度ナプキンで口を拭うと、話を変えようとした。

「それはそうと、室井さんは兄弟とかいらっしゃるんですか?」

完全には頭の中から消し去れていない、回想を引き摺ったままの質問。

これでは余計に自分の首を締めるのではないか。

しかし、室井さんは別段気にした様子もなく、すんなりと答えた。

「ええ、兄が一人。」
「へぇ、初耳だな。僕にも妹が居……るんですよ。」

危うく「た」と言いそうになり、軌道修正した。

室井さんは、そうなんですかと答えた後、続けてこう言った。

「実は、兄と高橋さんは同い年ぐらいなんですよ。」
「へ、へぇ。」

ドクン。

妙な期待を抱いてしまい、心臓が高く鼓動する。