時間は刻々と過ぎ、軽く酔いが回った頃、僕は言った。

「今日は梯子酒しませんからね。ただでさえ不安定なんですから。」

キッパリそう告げる僕に、絵夢はキョトンとした様子で聞き返した。

「何で?」

ガクッと、思わず机に突っ伏しそうになった。

やはり頭で認識していても、根本的に理解していないのかもしれない。

「僕は、視覚障害者なんですよ?酔っ払ったりなんかしたら、また帰れないじゃないですか。」
「いいじゃな~い♪そん時はまたアタシに負さって泊まっていけば」
「おおお、おぶさ、負さって!?」

思わず言葉が上擦ってしまった。

それを見た絵夢は、嬉しそうに前回の状況を説明する。

「『も~飲めましぇ~ん』『よしよし、良い子だからお家まで我慢してね』『我慢も出来ましぇ~~ん』『あぁんいや、こんな所で!人が来ちゃう』なんて事が……。」
「ううううううう、嘘でしょ?」

変な汗が滝のように額から流れるのが分かる。

んな馬鹿な。

「半分嘘。」
「半分って……どの辺りの半分ですか……。」
「うふふふ」
「『うふふふ』じゃないですよぉぉぉっ!!!」

嗚呼、完全に前以て意図していた事が壊されているな。

僕は絶叫する傍ら、そんな事を思っていた。