「……待ち合わせ場所も、駅前とか分かりやすい所にして欲しかったんですが……。」
「ゴメン、ゴメン。驚かしたくて♪」

悪戯にも程がある。

一歩間違えたら怪我するかもしれないんだぞ。

と、少し不機嫌になったのを感じたのか、絵夢は申し訳なさそうに素直に謝った。

「ごめんなさい……。」
「え?……ああ、良いですよ、気にしてませんから。」

なんて、甘いんだ。僕は。

普通に謝られただけなのに、不覚にも胸が高鳴った。

些細な魅力で許してしまう程、僕は女性の免疫が無いのだろうか。

「じゃあ、お詫びに此処からはアタシに奢らせて。さ、行こう!」
「え?…ちょっ!」

絵夢は僕の手を握ると、いきなり引っ張った。

列車にいきなり連れ込んだ時もそう。

全くこっちの都合を考えていないようだ。

(マイペースというかなんというか…)

僕はされるがまま、タクシー乗場へと一緒に向かった。