西新井町駅という場所は、それまであまり馴染みが無かった。

駅前のビルはオフィスとブティック、量販店が建ち並び、買い物客で賑わっている。

杖をカツカツ突きながら、以前の記憶を呼び戻してロータリーの方へ向かおうとするが、今一道が分からない。

来慣れた場所ならなんとかなるが、たった一度ぐらいでは把握出来ないのが歯痒い。

仕方無く、道行く人に方向を聞きながらなんとか到着する事が出来た。

今更ながら不安だ……。

本当に僕がどういう人間か分かっているのだろうか。

全然優しく無い待ち合わせ場所で待っていると、突然チョイチョイと肩を指で突かれた。

少しビクッとなると、早速悪戯をしてくれた彼女に非難の声を浴びせる。

「……勘弁して下さいよ……絵夢さん。」
「あははは♪ね、ビックリした？」

忍足で現れた彼女──絵夢は、無邪気に喜んだ。