「突然掴まれて、『危ない!』なんて言われたのには少しビックリしたけど………悪そうな人じゃ無さそうだし、大方飛び込みでもするかと思ったんでしょ?」
「あ、えぇと……あ~……。」
「良いわよ。顔に全部出てるから。そういう事なら許してあげる。」

それを聞いて、僕は胸を撫で下ろした。

誤解されなくて良かった……。

どうやら、僕の微妙な善意は好意的に捉えられたようだ。

そうと決れば、ここは迷惑を掛けたお詫びをして、家に帰宅でいいのかもしれない。

意外に大袈裟な事に発展しなくてすんだと気分的にも落ち着きを取り戻した僕は、彼女に頭を下げた。

「すみません。僕の勘違いで……危うく大事に巻き込むところでした。」
「良いってば。それよりも……。」

絵夢は、僕の手を取るとギュッと握り締めた。

「アタシにお詫びしたかったら、何か奢ってよ♪」
「はい?」



"次は西新井町~西新井町~お忘れ物の無いよう、降車下さい"



車内放送が流れ、ゆっくりと列車はブレーキをかけ始めた。