「小野塚、お疲れ様。さがっていいよ」


「はい。かしこまりました」



小野塚さんは一礼した後、部屋を出てゆっくりと扉を閉めた。


「よく来たね、白石紗柚菜さん?」


「――!! どっどうも……」



部屋で待っていたのはなんと……学園の王子、桜庭竜哉だった。


容姿端麗、頭脳明晰、運動神経抜群という三拍子そろった完璧男。
おまけに桜庭財閥の御曹司という超お金持ち。

桜庭財閥と言えば、日本中誰もが知っている大財閥。
日本の経済の大半は桜庭財閥のものだからね…。


噂ではファンクラブもあるみたいで、他校でも有名らしい…。



学園のみんなは王子とか竜哉様とか好奇な眼差しで見てるけど、あたしははっきり言ってあまり好きじゃない……。



理由は入試に負けたからとういう、超簡単なこと。

そんなこと?って思うかもしれないけど、あたしにとっては大事な問題なんだ。


小学校のころから男女関わらずなんでも一番だった。
勉強も運動も絵だっていつものように金賞をとっていた。

ママに褒めてもらえるのが、とっても嬉しかったから…。



高校入試、あたしは初めて負けを経験した。
あたしは桜庭竜哉に負けたんだ。


それが悔しくて仕方なかった。
人生初の屈辱だった。


ママは「特待生枠に入れるなんて凄いじゃない!」って言ってくれたけど、あんまり嬉しくなかった。


入試上位四人が入れる特待生枠に入ることは出来たけど、結局は二番。
一番じゃなきゃ意味がない…。



あたしって意外とプライド高いんだよね。


そんなこんなで、あたしは話したこともない桜庭竜哉をずっと嫌ってきたのだ。