――――放課後――――


午後の全ての授業を終え、あたしは桜庭竜哉のいう通り、玄関で彼を待っている。


そうそう、ゆーちゃんはというと…。
お昼休みに彼氏に会いに行ったまま、二人でデートに行ったんです!

信じられないでしょ?
普通の学校なら、不良しかやらないよね。サボりなんて。

ここは普通の学校じゃないからね。
どうにでもなっちゃうんですよ。

お金持ち学校なら、拘束も厳しいって思うでしょ?
でも、雅学園はちょっと違うんだよね。


生徒にストレスを与えないためにも、授業に参加するのも学校を休むのも、自由なんだ。
だから、先生もわざわざ出席を取ったりしない。
朝いた生徒が午後いなくなってても、何も言わないんだ。


あたしは、良い方法だとは思わないけどね。
自分のすることに、誰も口出ししないから、あんなわがままお嬢様が出来上がるんだよ。

こんなんで、将来の日本を担うっていうんだから、笑っちゃうよね。
まあ、ゆーちゃんみたいに普通に良いお嬢様もいるにはいるけど…。
性格の濃いお嬢様が多すぎるんだよね。この学園。


ゆーちゃんからは、午後の授業が始まる前にメールが来たんだ。
つい数分前に撮った、プリクラも付けてね。

相手の人は、一言で言えばイケメン。
ファッションモデルでもやってるんじゃないか…ってほどカッコよかった。

名前は佐野慧吾(さのけいご)。
有名な佐野ホールディングスの社長。
去年父親が他界して、それ以来、学校にもあまり通わず、仕事三昧の日々らしい。


小さいころからの知り合いで、三か月くらい前に、仕事の商談で再会。
告白は向こうからされて、ゆーちゃんは即OKしたんだって。


まぁ、見た感じ悪い人ではなさそうだし…。
――うん、今回黙ってた事は許してやるか。
反省してるみたいだしね。


……ところで、あたしにここで待ってろと命令したヤツは、一体いつになったら来るんだ?
10分以上は待ってるんですけど。

あんなに偉そうに命令しといて、レディーを待たせるってどういうこと!?


みんなはアレのどこが王子に見えるんだろ?
ただの変態スケベ野郎にしか見えないのに。


「「「キャアァァ―――!!!」」」


「――っ!?」

突然聞こえた数人のお嬢様の悲鳴。
その中心人物に、あたしは固まることしかできなかった。

「…マジ?」

やっと出たのがこの一言。
あたしは、ヤツが王子と呼ばれる理由を知ることになる…。