「それとも、ここで屋上の続きでもすっか? まだ30分あるし、十分できるけど?」


耳元で甘く囁かれ、ビクンと反応してしまう。
さっきの続きって……。


「…✕!〇#△?」

「プッ…。ホント飽きないな、お前」

ポンとあたしの頭を軽く叩いた。


この人…恥ずかしいって言葉知らないのか!?
いや、もしかして、別に恥ずかしいとか思ってない?

そうだよね、あたし以外にもきっと、こういうことしてきたんだろうし…。

―――って、何シュンとしてんの!?
別に、あたしが落ち込む理由ないじゃん。

今日のあたし、なんか変。
胸が…モヤモヤする……。


――どうしちゃったんだろう?


「あ、そうだ。今日、勝手に帰んじゃねぇぞ? これから毎日な」

「えぇ!? 毎日ぃ!?」

「…わかったな?」

「……はい」


ドスのきいた声に殺気を感じ、断れない。
こわっ……。

この声を聞くと背筋が凍る。


「でも、なんで? 桜庭家の場所はちゃんとわかってるけど…?」

「…場所とかじゃなく、お前の事を心配してんだよ」

「…はい?」


桜庭竜哉の言ってることが良くわからず、首をかしげる。


「だからっ……、ハァ……。いや、なんでもない」


何かを説明しようと思ったらしいけど、諦めた桜庭竜哉。
しかもため息つかれたし…。
あたし、なんか気を悪くするようなこと言った?


「とにかく、授業終わったら玄関で待ってろ! いいな?」

「う、うん……」


反抗すると、またきっと殺意を感じるので、素直にうなずくことにした。
それだけ言うと、桜庭竜哉は保健室を出ていった。


…あたし、別に方向音痴じゃないんだけどなぁ。
なんて、のん気なことを想いながらも、あたしも教室に戻ることにした。