――紗柚菜side――


あたしの後ろから現れたのは、桜庭竜哉だった。
寝起きなのか、あくびをしながら、頭をポリポリとかいている。


オヤジのような行動なのに、その姿にもなぜか色気がある。
さすが、学園の王子…。


――ホントは偽物だけどね…。



「ん? それ、お前が作ったのか?」

そう言って指さしたのは、あたしのお弁当。


「そうだけど?」

高校に入ってからは、自分でお弁当を作ろうと決めていた。
この学校は超お金持学校だから、ちゃんと学食もあるんだけどね、高級ホテル並みに大きい学食が…。


メニューも普通のものと違って、フルコースやバイキングがあたり前。
使用人が学校まで来て、料理を作ることも許されている。


庶民のあたしにとっては、フルコースやバイキングなんて食べるお金なんてないし?
もちろん、学校まで料理を作りに来てくれる人なんて、いない。



だから、お弁当を毎日作って、屋上で食べることにしたの。
ゆーちゃんと一緒にね。



「…俺の分はないわけ?」


そう言いながら、あたしのお弁当から卵焼きをパクっと食べた。


ああぁっ!! 最後までとっといたあたしの卵焼きぃ~…。
卵焼きいつもデザートの後、本当の最後の最後に食べるって決めてるのにっ!


キッと桜庭竜哉を睨む。
食い物の恨みは怖いんだぞぉ~。



「ないよ。なんであたしが、あんたの弁当作んなきゃなんないのさ! 小野塚さんに作ってもらえばいいでしょ?」


さっきの卵焼き事件で機嫌を悪くしたあたしは、ちょっと怒り口調で答えた。

王子だからって許さないんだからっ!!