「はあっ!? 王子にキスされたぁ~?!!」


「し――っ! 声が大きいよ、ゆーちゃん!!」


…あたしは、屋上で親友のゆーちゃんと一緒にランチ中――。

ゆーちゃんこと神崎柚子(かんざきゆず)は、あたしの大親友!
小学校のころできた初めての友達なんだ。


ゆーちゃんは大手化粧品会社の社長令嬢。スッと鼻筋の通ったきれいな顔立ちにツヤツヤの黒髪ロング。スタイルはモデル並みにいい。

誰もが振り向く、まさに絶世の美女である。


え? なんでそんな凄い人と親友かって?
それはゆーちゃんのママとあたしのママが友達だから。


パパ同士も古くからの友人らしく、今は家族ぐるみで仲がいいのだ。



「さゆ、その賭け乗ったの!?」


「うん」


だって負けず嫌いレーダーも反応しちゃったし、仕方ないじゃん。


「あんたバカじゃないの!? あんた絶対負けるよっ?」

そう言って、ゆーちゃんが、タコさんウィンナーさしたフォークをズイッとあたしに向かって差し出す。


「えぇ? 惚れないよ、絶対。あんな偽王子」

あたしも負けじとそのタコさんウィンナーをパクっと食べた。
食べた瞬間、「あ!!」って声がしたけど、差し出したゆーちゃんが悪いよね?


あんな変態男に誰が惚れますか。
まあ、この学園の女子ほとんどはヤツに虜みたいだけど。
あたしは他の女子とは違うからね。


てかそもそも、男子にあんまり興味ないし?
男子だってこんなブス相手にしないでしょ。


…そう考えると、桜庭竜哉って相当の変わり者かも。だって、こんなブス惚れさせたって何の得にもならないじゃん?
ましてやここは、あの有名な雅学園だよ?
可愛い女の子なんてより取り見取りだし、おまけにお金持ってゆう…ね。


――やっぱ変態だな、アイツ。