次の日ツナミを迎えに行くと綾乃さんだけが出てきた。


「ツナミは?」と聞くと2階を指差した。


「ルウコの部屋。お嫁に行ってもそのままにしてて、今もそのままだから。昨日はルウコの部屋で寝てたのよ」


懐かしい2階のルウコの部屋を覗くと、昔から変わらないベッドの上にポツンとツナミが座っていた。


「ツナミ」声をかけるとビックリした顔で振り向いた。


「あ、もうお迎えの時間?」


立ち上がってリュックを背負った。


「何してたの?」


「ママとお話してた。後、ママの小さい頃の写真見た。あたしと同じ顔だった」



綾乃さんにお礼を言って車に乗り込むとぼんやり窓の外を見ている。


「何かあった?昨日の事か?」


「違う。・・・ママの事思い出してた」


運転しながら「ママの事って?」と聞いた。


ツナミから過去形な言葉を初めて聞いた。


「ママとお花屋さんごっこいつもしてたけど、おウチのお花のお世話じゃんって思い出した。後はママのご飯だけいつも父ちゃんとあたしと違ってたとか」


「ママは味の濃い食べ物が食べれない身体だからな」


タバコに火を点けて窓を開ける。


「綾乃さんに聞いた。心臓悪かったんだって、中学生の頃から悪かったって教えてくれたよ」


「うん・・・」


ツナミは8歳には見えない様な大人びた表情で窓の外を見ている。