LOVE・GAMELY -恋愛遊戯- (全199話)

■一人暮らし
○Side 奈穂

ドライヤーの生温い風と共に香る甘い香り

シャンプーの香りだろうか…
トラからも微かに香る

人間のシャンプー使っちゃ駄目なんだけどな…
そう思ったが、綺麗になったトラを見たら自然と気にならなくなった


そういえば、この家…
他に人の気配がない

『あの… ご両親は?』

どう見ても1LDK
リビング以外にある部屋は寝室のようだし…

『一人暮らしじゃ悪い?』
『いえ… そんな意味じゃ…』

なかったんだけどな…

『親父は近くにいるけどね… 「お互い好きにやりましょう」ってやつ』

真中くんはそう言いながらドライヤーを片付ける

斜めから見える表情は、よく解らなかった

笑っているのか…
怒っているのか…
泣いているのか…

それから続いた数分の沈黙の後、真中くんの「送るよ」の言葉で家を出た




家に帰ってベッドに入ると、急に緊張が解れたような脱力感…

瞼(マブタ)までもが重くて目を開けていられない


突然されたキス…
アレは私にとって大事なファーストキスだった

ファーストキスは大好きな人と…
海を見ながら…

「漫画の見すぎ」って笑うかも知れないけど、憧れるのは個人の自由

ましてや彼女がいる人となんて…

『…フゥ…』

目頭が熱くなるとか力が入るとか、そんなの無しに
何故か自然と涙が零れた