彼女が横をすり抜けてから数十秒後、今まで固まっていたらしい彼はハッと我に返る。 そして……… 勢い良く振り返り、彼女を追いかけようとした。 しかし廊下に彼女の姿はもうなく、まだ肌寒い空気だけがそこを満たしていた。 「どうしたんだ?―――――竜也(りゅうや)」 中から聞こえる馴染みの声。 それに促されるように彼は保健室に入った。 「おーい、竜也。聞いてるか?」 「……………透(とおる)。今の子…誰?」