「天の川、見えないねー」

「うん…。曇りって言ってたから仕方ないか」

「あぁぁ~!! 今年こそは見れるかもって期待してたのにぃ!!」

「ちゃんと見れた試しないもんねー」


 私達はそう言って夜も更けた屋上で空を見上げていた。

 七夕といえば、女の子が大好きな行事。

 恥ずかしがりながら願いを短冊に書いて、一生懸命手を合わせたりなんかして。

 彼女とは幼なじみで、毎年のように七夕を過ごしている。


「中学生最後の七夕も天の川が見れないなんて、ついてないなぁ」

「まぁまぁ、来年があるさ」

「今年の七夕は今年しかないんだよ! だから楽しみにしてたのに!」

「って言ったってどうしようもないんだけど。あたしはどうしたらいいんだ」

「知らないよ!」

「……さようで」


 台所から持ち出したポットに温かい紅茶を淹れて、押入れから毛布を引っ張り出して、冷え込む夜を凌ぐ。


「そう言えば、何て書いたの? 短冊!」

「へ? ……何、いきなり」

「だーって見せてくんなかったじゃん。気になって今夜は眠れないよ」

「言ったら叶わなくなりそうだから言わない」

「いいじゃん、教えてよ!」

「そっちが教えてくれたら教えてもいいけど」


 なんて、まぁ大方予想はついてた。

 彼女の最近の望みは、隣に居るあたしがよく知ってる。


「私は……その、あれだよ。あの人と両想いになれますようにって」

「はぁー」


 ほらね。やっぱりこれだ。

 女の子っていうのはこれだから面倒臭い。

 ―――あたしが言えた義理でもない、か。


「何で溜め息!? だって良くない!? 七夕にお願いしたら叶いそうな気がしない!?」

「はいはい」

「もー。ほら、私教えたんだから、そっちの番!」


 あたしの願い。それはただ一つ。