「ね、きっと大丈夫だよ。行ってみようよ!」


 君は言った。


「やだよ。何があるか分かんないし…、怖いし」


 僕は言った。


「何があるかなんて先の事ばっか気にしてちゃ、この状況はどうにもなんないよ」


 君は少し呆れた顔で言った。


「だってこっから動きたくないもん。もう嫌なんだもん」


 僕は泣きはらした顔で言った。


「じゃー、いつまでそこで小さく蹲ってんのさ?」


 君は少し苛立った口調で言った。


「………もうちょっと待ってくれたっていいでしょ」


 僕は負けじと言い返した。


「そう言って待ってやったじゃん。もうどのくらいになるか知ってる?」


 君はまた少し呆れた顔で言った。


「……怖いんだよ……」


 僕はまた小さくなって言った。


「恐いのはボクも一緒! キミだけが怖いと思ってんの?」


 君はぎゅっと手を握って言った。


「……っ、違……」


 僕は震えているその手を握り返しながら言った。


「ほんとは分かってんでしょ。このままじゃダメだって」


 君は涙を浮かべながら言った。


「……やだよ……行きたくないよ!」


 僕は強く言った。


「分かった。じゃあここに居続けよう。その代わり、今度はキミがボクの背中を押す番ね」


 君はふわりと笑って言った。