「…フフッ」


衛兵達の青ざめた顔と沈黙に堪えきれず王子が吹き出す

その小さな笑いは、大きな笑いへと変わり、この薄暗い地下に響き渡った


「いやぁ、悪い悪い」


王子は、衛兵達の肩を
ポンポンと叩き悪戯を詫びた


『シモン』という人物は、気さくな人柄と端麗な容姿で国民から絶大な人気を誇るが、
その反面、悪戯好きで兵士達を困らせていた


「…心臓が止まるかと思いました」


「ははっ、そうか。ならば、これから町へ繰り出し、祭を楽しんでこい。俺が許可する。これは、詫びだ」


「ええッ!?」


「俺は、その部屋に用がある」


「…し、しかし」


シモンは、戸惑う衛兵達の背中を押し、「いいから行け」と追い払うかのように扉の前に立った


「この中にいる男を貴様らは、悪魔と呼ぶが、俺にとっては、ただ一人の友人だ」


そう呟いてシモンは扉を開けた